「起訴猶予」をわかりやすく解説|期間と前科とその後について

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起訴猶予とは刑事事件において「なんとなく有利な処分だ」というイメージを持たれている方が多いと思います。確かにひとまず起訴されない、刑事罰を科されないという意味では「有利」であることは間違いありません。

しかし、結論から申し上げると、起訴猶予になったからといって起訴される可能性が全くなくなったわけではありません。その意味で、起訴猶予になったからといって無罪が確定したわけではありません。

以下、この起訴猶予とは何なのか詳しく解説してまいります。

起訴猶予について

まず、起訴猶予の中身から解説していきたいと思います。

① 起訴猶予とは

起訴猶予とは、簡単に言うと下記のとおりです。

検察官が犯罪の成立は明らかであると認めたものの、被疑者(ひぎしゃ)に酌むべき情状(事情)があるため、起訴することを猶予する(見送る)『不起訴処分』の理由の一つ

*被疑者とは「罪の疑いをかけられた人」
*起訴とは「刑事裁判にかけること」

つまり、起訴猶予とは「不起訴」のことですから、起訴を前提とする懲役、罰金などの刑罰を科されることはありません。

また、起訴猶予の根拠となる刑事訴訟法247条、248条では次のように規定されています。なお、下記で言う「公訴」とは簡単に言うと起訴のことです。

刑事訴訟法247条【国家訴追主義】
公訴は、検察官が行う。

刑事訴訟法248条【起訴裁量(便宜)主義】
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

上記より分かることは、起訴権限は検察官に与えられているということです。

そして、起訴しない(つまり起訴猶予とする)ための判断材料として「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」を勘案するとされています。

② 起訴猶予と嫌疑不十分との違い

不起訴処分の理由の一つとして起訴猶予のほかに「嫌疑不十分」があります。

この嫌疑不十分と起訴猶予の違いは一体何でしょう。

起訴猶予は「検察官が犯罪の成立は明らか」つまり「仮に起訴しても刑事裁判で有罪を獲得できると確信を持てる場合」にする不起訴処分のことです。

対して「嫌疑不十分」は検察官が犯罪の成立が不明確、つまり、仮に起訴しても刑事裁判で有罪を獲得できる自信がないと判断する場合にする不起訴処分です。

③ 起訴猶予と無罪との違い

起訴猶予とするかどうかは検察官が判断します。対して無罪とするかどうかは「裁判官」が判断します。

また、起訴猶予は起訴される前(刑事裁判にかけられる前)の処分ですが、無罪は起訴された後の刑事裁判における判断です。

したがって、日本の刑事裁判での有罪率が99.9%と言われる中、仮に起訴された場合は有罪となる可能性が極めて高く、その点が「無罪」とは大きく異なります。

④ 起訴猶予となる罪は?

起訴猶予となる罪は、犯罪と言われる罪すべてが対象です。

例えば拘留、科料のみしか規定されていない「軽犯罪」、罰金のみしか規定されていない「過失致死罪」(刑法210条)などはもちろん、選択刑として懲役、罰金が規定されている「痴漢、盗撮、窃盗」から無期、死刑が規定されている「強盗、放火」の罪なども起訴猶予の対象となります。

⑤ 起訴猶予となるために考慮される事情

「起訴猶予となるために考慮される事情」は刑事訴訟法248条でも規定されているとおり「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」です。

これをさらに細かく分析すると以下のとおりとなります。検察官は以下の事情を総合的に考慮して起訴猶予とするか否かを決めています。

① 犯人に関すること
ア 性格
→前科・前歴の有無など
イ 年齢
ウ 境遇
→住所、定職(あるいは就く見込み)の有無、家族関係など
② 犯罪事実に関すること
ア 犯罪の軽重
→犯した罪の法定刑・罰則、被害の程度・結果
イ 犯罪の情状(犯情)
→犯行の原因・動機、手口、態様、利得の有無・程度、被害者との関係、社会的影響力、模倣性など
③ 犯罪後の情況(一般情状)
反省の程度、再犯防止に向けた環境の変化、適切な監督者、身元引受人の有無、被害弁償・示談の有無、被害者・遺族の処罰感情など

起訴猶予獲得のために必要なこと

起訴猶予獲得のために必要なことは、前記1⑶③の「犯罪後の情況」で挙げた事情のうち、被疑者にとって有利な事情をどの程度作出できるのかということにかかっています。

また、作出できた有利な事情を形として検察官に示さなければ意味がありません。そこで、作出できた事情を証拠としてきちんと残しておくことが必要になります。

たとえば、被害者のいる事件では被疑者に対する被害弁償、あるいは被害者との示談が起訴猶予獲得にとって非常に大切です。

そして、仮に、被害者に対して被害弁償できた場合は領収書、あるいは被害者と示談できた場合は示談書を取り交わしておくことが必要です。

その上で領収書や示談書を検察官に提出するなどして起訴猶予獲得を目指すのです。

起訴猶予で「前科・前歴」がつくか

結論から申し上げますと、起訴猶予となれば、前科はつきません

そもそも、前科は起訴され刑事裁判で有罪とされて懲役、罰金などの刑罰を受け、その刑事裁判が確定したことによってはじめてつくものです。

起訴→刑事裁判→有罪(懲役、罰金など)→刑事裁判確定→前科

という流れになります。

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起訴猶予となったということは、不起訴、つまり起訴されなかったということを意味します。そこで、刑事裁判を受ける、刑罰を受けるおそれもなく前科はつかないということになります。

なお、前歴」はついてしまいます。もっとも、前歴がついたことで受ける不利益としては、仮に再犯した場合に検挙歴(前歴)があるということを捜査機関や裁判所(起訴された場合)に知られ、捜査員や裁判官の心証に多少の影響を与える程度です。

その他、前歴がついたこと自体を理由として何らかの社会的不利益を受けるという心配はありません。

起訴猶予と執行猶予との違い|起訴猶予には「期間」があるか

先述したとおり、起訴猶予とは起訴を猶予することで、つまり起訴されないということです。

また、この段階では「無罪推定の原則」が働きますから、有罪と決まったわけでもありませんし、罪の「時効」が完成するまでの間は、起訴される可能性は大なり小なりあります。

他方で「執行猶予」とは起訴されたこと、また起訴後の刑事裁判において「有罪」とされたことが前提となります。執行猶予には1年から5年までと期間があります。

しかし起訴猶予には「期間」は特に定められていません。

以上、起訴猶予と執行猶予は起訴、有罪、前科の有無、期間の点で大きくことなります。起訴猶予と執行猶予との違いを表でまとめると以下のとおりとなります。

起訴・刑事裁判有罪・無罪前科期間
起訴猶予なし無罪推定の原則が働くつかないなし
執行猶予あり有罪つくあり

起訴猶予のその後|通知はある?逮捕・起訴される可能性はある?

まず、検察官が起訴猶予による不起訴処分をしたとしても、検察官が被疑者に対して「あなたを起訴猶予による不起訴としました」と通知する義務はありません。

もっとも、刑事訴訟法(259条)では下記のように定められています。

「被疑者から請求があった場合は不起訴とした旨を告知しなければならない」

したがって「起訴されたのだろうか、不起訴となったのだろうか」などと気になる方は、適当な時期に、検察官に対して不起訴とした旨の「告知を請求する」ことはできます。

検察官が事件を不起訴とした場合、請求を受けた検察官は通常書面で「●月●日付けで不起訴とした(公訴を提起しない処分とした)」という回答をします。

ただし、この場合でも、不起訴の「理由」(起訴猶予、嫌疑不十分など)までは回答してくれません。

また、繰り返しになりますが、起訴猶予は「起訴」が「猶予」されたことです。したがって、起訴猶予による不起訴となったとしても、今後起訴される可能性は残されているといえます。

どんな罪にも公訴時効(いわゆる時効)があり(殺人罪など一定の重大な罪を除く)、時効が完成するまでは起訴される可能性が残されているのです。

検察官は起訴すべき事由(たとえば、同種再犯を犯した、起訴猶予とした約束事、遵守事項を破ったなど)を認め、その罪の証拠等を総合的に考慮して「起訴すべき」と判断した場合は、事件を再起(再び刑事事件化)して起訴します。

まとめ

起訴猶予は起訴を猶予し、刑事裁判や刑罰の負担から解放することで社会内更正を図るという意義も有しています。

しかし、起訴猶予とは無罪放免になったということではありません。

仮に、時効が完成するまでの間に再犯した場合などは起訴される可能性も少なからずあります。

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