「在宅事件」の注意点!痴漢をしてしまったけど逮捕されない
「家族や友人が痴漢の容疑で警察に話を聞かれている」そういう話を聞くと「逮捕?警察に捕まっているなら早く釈放してあげたい」と誰しも思うものです。しかし実は全ての被疑者が身柄を拘束されるわけ(身柄事件)ではありません。この記事では「痴漢で在宅事件になる可能性」について説明します。
1.在宅事件とは
1-1.逮捕、勾留、裁判の流れ
「在宅事件」について考える前に、まず一般的な刑事事件の流れを把握しておくといいでしょう。
というのが一般的な刑事事件の流れです。
1-2.「逮捕」の目的
逮捕とは、被疑者が逃亡したり証拠隠滅をしたりすることを防止する目的で、被疑者の身体を一定期間拘束することです。逆に言うと、「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」と判断された場合は、警察で事情を聞かれたとしても、逮捕=身柄の拘束にまでは至らないという場合もあるのです。
1-3.在宅事件になる場合
上記のようにそもそも「逮捕」されない場合はもちろん、一旦「逮捕」はされるものの、警察や検察の取り調べの途中で釈放されて在宅事件になることもあります。
1-4.どのような時に在宅事件になるのか
簡単に言うと「逃亡や証拠隠滅の恐れがないとき」です。具体的には
- 身分がはっきりしている
- 同居家族がおり、逃亡の恐れがない
- 罪を認め、反省している
- 罪が軽微である(罪状が「強制わいせつ」ではなく「迷惑防止条例違反」だと可能性は高まるでしょう)
- 証拠隠滅の可能性がない(被害者と直接接触すると「証拠隠滅をはかっている」と思われることがありますが、痴漢事件の場合はそもそも被害者の連絡先を知らないことがほとんどです)
などの場合、在宅事件になる場合が多いようです。
2.在宅事件のメリット
在宅事件のメリットとして
- 勾留されないので仕事や学校へ変わらずに行くことができ、「長期間の勾留によって逮捕事実がばれてしまう」ということが起こりにくくなる
- いつもどおりの生活を送ることができる
- 弁護士との打ち合わせも十分に行える
などが挙げられます。そもそも「長期間身柄が拘束されない」ということは、それだけで大きなメリットです。
3.在宅事件のデメリット・注意点
まず、「逮捕されなかった」というだけで安心してしまう人がいますが、油断してはいけません。捜査・取り調べは継続していますから、呼び出しなどがあればきちんと応じる必要があります。
また、逮捕→勾留される場合は最大20日以内に起訴・不起訴が決まるのですが、在宅の場合はその限りではありません。そのため起訴・不起訴が決まるまでに長ければ数ヶ月もの時間がかかることがあります。
4.検察での取り調べ前にしておきたいこと
在宅事件の場合は検察に何度か呼び出され、取り調べを受けることになります。取り調べの時期は内容や検察官の都合によって変わってきますが、呼び出しがあるまでただぼんやりと待っているのと、必要な準備をしておくのとでは、大きな違いが出てきます。
検察は「起訴・不起訴」を決めるのですが、起訴されると前科がついてしまいます。前科が付くと、会社の懲戒解雇、海外出張や旅行の制限など様々な不都合が生じるため、できる限り不起訴に持ち込めるよう、いろいろと準備する必要があるのです。
痴漢事件の場合、不起訴に持ち込むために不可欠なのは「被害者との示談」です。示談が成立していると不起訴になる確率はぐっと高まります。
しかし、被疑者が被害者と直接話し合って示談をまとめる、というのはどう考えても現実的ではありません。場合によっては証拠隠滅行為とみなされ、身柄を拘束されてしまう可能性もあります。
5.在宅事件になったら可能な限り早く弁護士に依頼しよう
では、在宅事件で不起訴を目指すためには何をすればいいのでしょうか。
答えは簡単で、「弁護士に依頼をする」というのが最もスムーズかつ最良の方法です。
勾留されている場合、起訴・不起訴は勾留から20日以内に決まります。しかし在宅事件の場合はその限りではなく、検察からの呼び出しがいつになるのかはわかりません。
呼び出しがあってから弁護士を探して示談を検討するのでは間に合わない場合もあります。「逮捕されなかったのだから罪は軽いと言うこと、そのまま放っておいても大丈夫」「軽い罪なら罰金で済む」などと安易に考えず、在宅事件になった段階で弁護士に依頼をして、できるだけ早急に今後の対策を考えるべきなのです。
当然と言えば当然ですが、痴漢事件の被害者はたいていの場合、被疑者と直接交渉することを嫌がります。しかし間に弁護士が入ることで「話だけなら聞こうかな」「金額の検討をしてみようかな」など、柔軟に考えてくれるようになります。
「逮捕されずに在宅事件になった!」というだけで浮き足立たず、その後の処分も見据えて一度弁護士に相談することを強くおすすめします。
もちろん在宅事件にならずに逮捕され、身体拘束をされてしまった場合も、できるだけ早急に弁護士へ相談しましょう。どんな場合でも、刑事事件はとにかくスピードが命です。
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