痴漢で後日逮捕はありえるのか?

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弁護士相談Cafe編集部
本記事は痴漢・盗撮弁護士相談カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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痴漢行為といえば、その場で現行犯逮捕されるというイメージを持っている方が多いのではないでしょうか?痴漢を疑われたら逃げろと一時言われたこともあり、逃げた人もいるかもしれません。ただ、仮に逃げ切ったとして痴漢で後日逮捕されることはあるの?という素朴な疑問がでてきます。

実は、痴漢行為をして逃げ切ったあとでも、被害者が警察に申告すれば捜査は継続されます。そして、後日逮捕ということもありえるのです。今回は、痴漢事件と後日逮捕について詳しく解説いたします。

痴漢逮捕の実際の状況とは?

まず、痴漢事件で逮捕されるときの実際の状況について解説します。

逮捕の方法は、大きくわけると令状逮捕と現行犯逮捕の2つ

まず、逮捕と一言で言っても、実は種類があります。最初に、逮捕の種類ついて理解していきましょう。

なんとなくイメージされている方も多いかもしれませんが、逮捕には「令状のある逮捕(現行犯以外)」と「令状のない逮捕」があります。

基本的には、裁判官の審査を受けた令状に基づく逮捕というのが原則です(刑事訴訟法199条1項)。

ある特定の犯罪の疑いがあり、捜査の結果、十分な嫌疑・逮捕の理由・必要性があると判断されると令状が出されることになります。警察は、裁判所からでた令状に基づき被疑者を逮捕します。

そして、もう1つが現行犯逮捕です(同法213条)。現行犯逮捕は、犯罪を現認した場合か、その直後、あるいは時間がそれほど立っておらず、その犯人による犯行が明らかである場合(同法212条・準現行犯逮捕)に可能となります。

このように、逮捕といっても、令状に基づく逮捕とそうでない逮捕があります。じっくり時間をかけて逮捕に至るケースと、その場で逮捕という2種類があると覚えておいて下さい。

痴漢事件では、現行犯逮捕が多い理由

痴漢逮捕の場面で、一番多いのが現行犯逮捕です。

それは、痴漢事件の場合、現場の目撃者や被害者の供述が証拠の軸となる事件が多いためです。例えば、電車内で痴漢犯人が女性の体を触ったとします。このとき、女性が勇気を出して相手の手をつかんだ場合、周囲の人の協力も経てその場で捕まえることになります。また降車した際に、「痴漢です」と被害者女性が声を上げることもあるでしょう。このようなケースの場合、目撃者がいる場合は、「犯行が明らか」ということになり、現行犯逮捕という形がとられることになるのです。

このように、痴漢事件では、その特徴から現行犯逮捕が多くなっているという実情があります。

後日逮捕・現行犯以外の逮捕も、一定数存在する

では、痴漢事件で令状に基づく後日逮捕、つまり「現行犯以外の逮捕」は極めてレアなケースということでしょうか。

本当に希かと言われると、そうでもありません。実際に、後日逮捕で捕まったケースもあるからです。例えば、犯行当日はなんとか振り切って逃げたが、警察の捜査によっても身元が特定され、後日逮捕されるというケースです。いきなり令状を持ってきて、「逮捕します」というよくあるテレビドラマの設定ではなく、警察から連絡があり「お話を聞かせてもらえますか?」と警察への任意同行を求められ、警察署内の取り調べ後に令状に基づく逮捕というケースが考えられます。

このように、痴漢事件では、現行犯逮捕が多いものの、後日逮捕のケースも実際に存在するということです。痴漢事件を起こした当の本人は逃げ切ったことで安心しているケースも多く、いきなりの警察からの連絡に困惑するということもありえます。

後日逮捕のための捜査は、どのように行われるの?

次は、後日逮捕をするために、警察が行う捜査方法を見ていきましょう。

まずは、被害者・目撃者の「供述」を元に、犯罪捜査を進めていく

では、どのように痴漢事件の捜査は行われるのでしょうか。

まず、ほとんどのケースで「被害者の申告」から始まります。「痴漢被害を受けた」という駅員・警察への連絡とともに、犯行現場で捜査がはじまるのが通常です。

痴漢事件などの性犯罪事件については、基本的に被害者からの供述で捜査を始めることが多くなっています。現在は、撤廃されましたが、もともと性犯罪は親告罪といって、被害者の申告なしに捜査できないという決まりがあったためです。被害者の心情を考えてこのような取り扱いとなっていました。

したがって、証拠としても、被害者の供述は大変重いものとなっています。これを軸に犯罪捜査が行われるだけでなく、被害者の証言はよほどの矛盾がない限り、そのまま証拠として勘案されます。

また、被害者だけでの証言ではなく、周囲の人の証言なども聴取することになります。実際の犯行現場の状況から、複数の人の証言が得られれば、供述の信用性は高く評価されることになります。

もっとも、証言だけが証拠となるのではありません。被害者が相手に目印をつけるため、「相手の手の甲を引っ掻いた」というケースなどでは、爪に付着した皮膚の DNAなども証拠として採取され、証拠になります。

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このように、痴漢事件の捜査は被害者の証言を軸に動き出すことになります。逆にいうと、これがない限り事件化することも少ないということです。

防犯カメラの映像も欠かせない

被害者当の供述以外にも、客観的証拠が犯人捜査の決定打になることがあります。

具体的には、「防犯カメラ」が役に立つことがあるのです。最近の駅では、防犯カメラが駅構内あらゆるところに設置されていますよね。そこから逃げた犯人の特徴などを割り出すことができます。逃げ切られたあとでも、犯人の顔や体格などを確認することが可能になっています。

これ以外にも、一部私鉄によっては、電車内に防犯カメラが設置されている電車もあるようです。何度も同じ電車で被害が申告されているという場合には、犯行自体が映像に映っている可能性があるため、犯人を見つける大きな手がかりとなります。

このように、防犯カメラの映像も痴漢事件では大きな役割を果たします。これは現行犯逮捕だけでなく、後日逮捕の捜査の端緒としても利用されます。

電子マネー「suica」が役に立つことも

電子マネー「suica」が痴漢事件捜査の役に立つこともあります。

電車の定期については、ほとんどの方が「suica」などの電子マネーを利用しているのではないでしょうか。実は、「suica」には氏名・住所などの個人情報だけでなく、利用した日付や時間なども情報として登録されています。そのため、この情報は痴漢事件でも、犯人捜査の際に役に立ちます。例えば、痴漢行為を行った犯人が出場の際に、「suica」を利用したとします。防犯カメラの映像と照合すれば、何時に出場したのかがが明らかであり、そこから「suica」の情報と照らし合わせて犯人の身元を特定することが可能となります。

このように、「suica」の情報が痴漢事件の捜査に役に立つこともあるんです。被害者の供述を軸に、目撃者の供述、防犯カメラの映像、「suica」の記録全てを照合して、犯人が逃げてしまったあとでも逮捕が可能になるということです。

犯人特定はどのような手続きで行われるのか

では、犯人特定のための捜査は、どのような手順で進めていくのでしょうか。

被害者や目撃者の供述を得るのに、特に令状が必要になることはありません。基本的には、積極的にお話ししてもらえることが多いためです。

しかし、防犯カメラやsuicaの記録を閲覧する場合には、原則として令状が必要になります。もっとも、捜査関係事項照会書として、捜査のために防犯カメラの映像記録を見せて欲しいと文書でお願いするケースもあります(刑事訴訟法197条2項)。緊急性があるケースなど、場合によっては「文書なし」で任意で提供してもらえることもあるようです。

警察は、このような手続きを経て入手した防犯カメラ・suicaの記録をもとに内容の解析を行います。防犯カメラの映像しかない場合には、犯人を特定するため、顔映像をもとに、過去の痴漢事件の被疑者や運転免許証の写真などと照合し、同一犯ではないかなどの捜査を行っていきます。

このように、痴漢事件の捜査は、令状又は文書などの手続きを経て映像解析などの踏み込んだ捜査を行っていくことになります。

性犯罪事件が厳罰化の傾向に

痴漢事件として立件されるのは「強制わいせつ罪」(刑法176条)か「迷惑防止条例違反」(東京都迷惑防止条例5条1項1号)となります。

最近では、法律の改正により厳罰化されるようになっており、これまでより犯人捜査が行いやすくなりました。以下、詳しく見ていきましょう。

2017年7月、強制わいせつ事案は親告罪が撤廃

痴漢事件では、衣服の上から触るなどを行った場合には迷惑防止条例違反(東京都迷惑防止条例5条1項1号)などで、それぞれの条例により罰せられることになります。もっとも、下着の中にまで手を入れて痴漢行為などを行った場合には、これよりも罪が重くなり、強制わいせつ罪(刑法176条)が適用されます。そして、強制わいせつ事件を含む性犯罪について、最近大きな改正がありました。

それは、性犯罪についての「親告罪」規定の撤廃です。

これまでは、強姦罪や強制わいせつなどの性犯罪事案については、起訴するためには被害者の告訴が必要不可欠でした。刑事訴訟法上も、被害者の心情を考慮して被害者の処罰意思が明確でない限り、起訴できないとしていたのです。

そして、これは捜査上も同じです。起訴の可能性がある場合に、告訴なしの捜査を行うのは良いのですが、起訴の可能性がない場合には、捜査自体も禁じられていました。

では、この改正により、痴漢事件について何が変わるのでしょうか。

簡単に言いますと、強制わいせつ罪が適用される痴漢事件については、警察が今までより捜査を行いやすくなります。これまでのように被害者の告訴があって、そこから捜査を始めるという流れではなく、警察が独自に捜査を開始することも可能となったのです。つまり、痴漢事件の取り締まりが強化される可能性が高くなります。

強制わいせつ事件は、「6月以上10年以下の懲役刑」(刑法176条)が課される可能性のある重大犯罪です。罰金刑もないため、不起訴にならない限り、正式裁判を受けることになります。強制わいせつ事案の場合は、現行犯逮捕でなく事後逮捕であっても、立件される可能性が高いということを理解しておきましょう。

迷惑防止条例違反は、不起訴の可能性もある

有罪が確定すれば前科がついたり刑務所に収監されてしまうケースも多いです。これを避けるためには、起訴前に示談を行うことが必須です。

特に、迷惑防止条例違反の場合は、示談で不起訴となることがほとんどです。性犯罪の事例としては、軽い罰則のため、示談で解決しようとすることが多くなっています。また、強制わいせつの痴漢事件では、よほどの悪質な事例を除き、示談で不起訴になる可能性が多分に残されています。

仮に示談となれば、家族にも会社にも迷惑をかけることなく、最小限の負担で社会に復帰できます。つまり必ずしも倫理的に正当とは言えないですが、痴漢をして逮捕されたとしても、必ず会社をクビにされるわけではないのです。痴漢と会社についての解説は下記記事をご参考ください。

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示談には、弁護士が必要になる

「痴漢行為を行ってしまい、逃げてしまった…」。そして、「後日逮捕されるかもしれない」と考えている方は、逮捕される可能性は捨てきれません。

逮捕されることに怯えるくらいなら、自分から警察に名乗り出て謝罪・示談することも可能です。

また、後日逮捕が実際に起きた場合には、早めに示談を成立させることで、社会生活への影響も少なく済みます。

示談をするためには、被害者に納得してもらうことが重要です。そのためには、第三者である弁護士を挟んでの話し合いが解決への近道となります。自分で示談交渉や知り合い・家族を巻き込んでの示談交渉となると、余計に被害者を脅えさせることになってしまい、示談は難しくなります。

早めに、専門家である弁護士に依頼することで早期解決が望めます。痴漢の後日逮捕に関連して、お悩みの方は、お近くの弁護士にご相談ください。

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