痴漢の証拠|DNA・繊維鑑定で、無実を立証することは本当に可能か?

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痴漢行為の多くは、満員電車という混雑の最中起こるため、客観的な物的証拠に乏しい場合が多いです。

痴漢事件における証拠は、どのようなものがあるのか、疑問に思う方も多いでしょう。今回は、「痴漢と証拠」について解説します。

痴漢の5つの証拠と検査、その有効性

痴漢事件において証拠となることが多いのは、以下の5つのものです。

①被害者・目撃者の供述・証言

痴漢の証拠として、まずは被害者の証言が挙げられます(これは、被害者のいる犯罪に共通する証拠です)。

また、犯行を直接見ていた目撃者がいる場合には、その供述調書や公判廷での証言も証拠となり、これはかなり重要視されます。

もちろん、被害者や第三者の証言であるというだけで、信用されるわけではなく、下記のような点から信用性が検証されます。

  • 視認状況(目撃者の位置から、本当に言っているような犯行状況が見えるか?)
  • 供述の変遷の有無(警察・検察で述べたこと、公判廷で述べたことが一貫しているか?主尋問と反対尋問で矛盾はないか?)
  • 具体性・迫真性
  • 不自然・不合理な点の有無
  • 被害者・目撃者の供述との整合性

特に、被害者の供述において「具体的・迫真的な供述で、不自然・不合理な点がない」と判断されることも多く、証拠として採用されることが多いのは問題であると言われることもあります。

なぜなら、被害者等の証言以外に証拠(特に物的証拠)がない場合には、冤罪を引き起こす可能性が十分考えられます。

痴漢事件においても、供述証拠に偏重するのではなく、非供述証拠を重要視するべきと言えるでしょう。

②被疑者本人の自白

本人が、警察官や検察官の取り調べで自白し、その内容の供述調書に署名・捺印することももちろん有罪の証拠となります。

刑事裁判において、自白は現在もなお非常に重要なものと考えられています。

「会社に行きたいから取り調べを終わらせたくて認めてしまった」「本当のことは裁判で明らかになるはずだ」というような気持ちで認めてしまった場合でも、「やってもいないことを自白するはずがない」という考えが警察・検察の中で根強いため、自白後に覆すことは極めて困難で注意が必要です。

③DNA鑑定

本人の自白以外で有罪に繋がる重要な証拠といえば「DNA鑑定」です。

被害者の体液が被疑者の手指に付着していれば、有力な有罪の客観的証拠になります。

逆に、「被害者が主張するような触り方をすれば被害者の体液が被害者の手指に付着するはずなのに、全く付着していない」という場合には、被疑者は、これを冤罪・無罪の証拠として強く主張していくことになります。

④指紋・衣服の繊維鑑定|物的証拠

衣服の繊維鑑定とは、被害者の下着やスカートなどの繊維が被疑者の手指に付着しているかどうかを鑑定することです。

犯行直後に、被害者の下着やスカートに使用されている繊維と同じものが被疑者の手指についていた場合には、有罪の証拠として利用されます。

ただ、繊維というのは、様々な衣類で類似のものが使われていますから、手指に付着していた繊維が、自分の着衣の繊維だったり、周辺の乗客の衣服の繊維だったという可能性だってあるわけです。

そこで、よほど特徴的な繊維である場合を除いては、被害者の下着やスカートに使用されている繊維と指に付着した繊維が一致していたというだけで、有罪方向への証拠として安易に利用するのは危険と言えるでしょう

被疑者側は、その点を強く主張しなければなりません。

なお、被害者の下着やスカートの繊維と類似の繊維が、被疑者の手指に全く付着していないとしても、ただ繊維がつかなかっただけだと考えられやすいので、繊維鑑定は、無罪の証拠とはなりにくいという側面があります。

また指紋に関しても同様で、たまたま被害者の身体に触れてしまったという場合も考えられますので、即証拠とはなりにくいです。

⑤防犯カメラの映像による立証

最近、車両に防犯カメラが設置されている電車が登場しました。

女性の体を触っているか、触っていないかがはっきり分かるような防犯カメラの映像があれば、もちろん客観的に有力な証拠となります。

ただ「満員電車で乗客同士の体が密着して下方の状況が写らない可能性が高いのでは?」とその有効性を疑問視する声も一部であがっています。

冤罪|相手の証言だけで、不十分な証拠で有罪になるケース

刑事事件では、証拠がない場合には「疑わしきは被告人の利益に」という考え方により、無罪判決がなされるべきです。

刑罰というのは、最大の人権侵害であるため、怪しいというだけで科してはならないものだからです。

しかしながら、被害者の供述が「具体的・迫真的な供述で、不自然・不合理な点がない」と判断されると、客観的な証拠不十分であっても、有罪となってしまうことがあります。

被害者は、自分が嘘をついていないという自信がありますので、堂々と具体的・迫真的な供述をしますが、実際は「触られたと思い込んだ」とか「別の人が触っていた(犯人を勘違いした)」ということもあります。

そして、堂々と証言しているため、裁判官(裁判所)も明らかに不合理・不自然な点が見つからなければ、被害者の供述は信用できると判断してしまうのです。

このようなケースで、被害者はどう対応するべきなのでしょうか。

「手の甲がぶつかっただけ」「少し足がぶつかっただけ」等の言い訳は通用するか

警察の取り調べなどで、自分の状況を具体的に説明する段階になった場合、冷静に自分の言い分をきちんと説明する必要があります。

  • 「こういうふうに立っていて、こうかばんを持っていたから、手の甲があたっていた」
  • 「電車がゆれたときに足がぶつかった」

ただ、このときにも、あくまでも「記憶にあることだけを具体的に伝える」ことが必要です。あいまいなことは言わないようにすることが肝心です。

また、矛盾が出て来たり、DNA鑑定で被害者の体液の付着が確認されたり、目撃者や被害者の供述と整合しないということになれば、嘘は簡単にばれます。

裁判では、一つ嘘をつくと、その人が述べたことすべてが信用できないと判断されやすいので、情状も含めて、かなり不利になるので注意が必要です。

これまでで述べたことを踏まえると、痴漢を疑われた場合の対処法も大事ですが、そもそも痴漢の疑いをもたれないような工夫をする必要がある事がわかります。

よく言われているように、両手でつり革につかまるなど、痴漢に間違われないような対応策を取ることも、自分の身を守るために大切なのです。

被害者供述の信用性に慎重な判断を示した最高裁判所の判決

なお、最高裁判所は、平成21年4月14日に痴漢事件(強制わいせつ被告事件)で、無罪判決を出したことがあります。

これは、最高裁判所が「初めて痴漢事件を無罪」にした判決であると言われています。

この事案も、被害者の供述のみが証拠であった事案です。

第一審判決では、被害者の証言について、「当時の心情も交えた具体的、迫真的なもので、その内容自体に不自然・不合理な点はなく、被害者は、意識的に当時の状況を観察、把握していたというのであり、犯行内容や犯行確認状況について、勘違いや記憶の混乱が起こることも考えにくい」と、その信用性を認めて、被害者の供述を証拠として「有罪判決」を言い渡していました。

一方、最高裁判所は、一転して、被害者の供述の信用性を慎重に判断し「疑わしきは被告人の利益に」の観点から無罪を言い渡しました。

痴漢を解決したい場合は、弁護士に相談

上記の最高裁判所判決の影響もあり、痴漢事件の捜査・立証は慎重に行われるようになってきています。

しかしながら、満員電車という密室で起こる痴漢事件が、客観的証拠が得られにくいものであるということに変わりはありません。

そこで、客観的な証拠がなくても、被害者供述が信用できると判断されれば、被害者の供述のみで有罪とされることがなくなるということはありません。

すでに逮捕されてしまい指紋も見つかってしまった場合など、痴漢問題や冤罪問題を解決したい場合は、すぐに弁護士に相談に相談することが大事です。

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