痴漢の証拠|DNA・繊維鑑定で、無実を立証することは本当に可能か?

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痴漢事件の多くは、満員電車という密室で起こるため、客観的な証拠に乏しい場合が多く、被害者の供述に頼りがちとなります。

証拠となりうるものには、何があるでしょうか?通常どのように立証されるのでしょうか。加害者は被害者の供述に反論すらできないのでしょうか。そこで今回は、「痴漢と証拠」について解説して参ります。

1. 痴漢の5つの証拠と検査、その有効性

逮捕後警察から、次のような起訴に足るだけの証拠を集められることが多いです。

1-1.DNA鑑定

本人の自白以外で有罪に繋がる重要な証拠といえば「DNA鑑定」です。

被害者の体液が被疑者の手指に付着していれば、有力な有罪の客観的証拠になります。

逆に、被害者が主張するような触り方をすれば、被害者の体液が被害者の手指に付着するはずなのに、全く付着していないという場合には、被疑者は、これを冤罪・無罪の証拠として強く主張していくことになります。

また、公判で加害者が否認に転じる場合に備えて、悪質な痴漢と考えられる場合は警察は必ずDNA鑑定と、次の項目で解説する繊維鑑定を行うようにしています。ただしその鑑定の結果を警察は加害者側には知らせてはくれません。

1-2. 指紋・衣服の繊維鑑定

衣服の繊維鑑定とは、被疑者の手指に付着している繊維を採取して、被害者の下着やスカートなどの繊維が付着しているかどうかを鑑定することです。

被害者の下着やスカートに使用されている繊維と同じものが被疑者の手指についていた場合には、有罪のための証拠として利用されます。

ただ、繊維というのは、様々な衣類で類似のものが使われていますから、手指に付着していた繊維が、自分の着衣の繊維だったり、周辺の乗客の衣服の繊維だったという可能性だってあるわけです。

そこで、よほど特徴的な繊維である場合を除いては、被害者の下着やスカートに使用されているのと類似の繊維が指に付着していたというだけで、有罪方向への証拠として安易に利用するのは危険です。被疑者側は、その点を強く主張しなければなりません。

なお、被害者の下着やスカートの繊維と類似の繊維が、被疑者の手指に全く付着していないとしても、ただ繊維がつかなかっただけだと考えられやすいので、繊維鑑定は、無罪の証拠とはなりにくいという側面があります。

また指紋に関しても同様で、たまたま触れてしまったという場合も考えられますので即証拠とはなりにくいです。また被害者の衣服や肌から、加害者の指紋が見つからない場合はもちろん不起訴になりやすいと言えます。

1-3. 目撃者・被害者の供述・証言

被疑者・加害者のような当事者ではなく、第三者である目撃者がいる場合には、その供述調書や公判廷での証言は、かなり重要視されます。

もちろん目撃者であるというだけで、信用されるわけではなく、下記のような点から信用性が検証されます。

・視認状況(目撃者の位置から、本当に言っているような犯行状況が見えるか?)
・供述の変遷の有無(警察・検察で述べたこと、公判廷で述べたことが一貫しているか?主尋問と反対尋問で矛盾はないか?)
・具体性・迫真性
・不自然・不合理な点の有無
・被害者・目撃者の供述との整合性

被害者の証言に関しても、上記の観点から検証した結果、信用性が認められば、証拠として使えると判断されます。

もっとも、被害者の供述は「具体的・迫真的な供述で、不自然・不合理な点がない」と判断されやすく、証拠として採用されることが多いのは問題であるとされて、現在は法的に見直しが進み始めています。

1-4. 被疑者本人の自白

本人が、警察官や検察官の取り調べで自白し、その内容の供述調書に署名・捺印することももちろん有罪の証拠となります。

「会社に行きたいから取り調べを終わらせたくて認めてしまった」とか、「本当のことは裁判で明らかになるはずだ」というような気持ちで認めてしまった場合でも、「やってもいないことを自白するはずがない」という考えが警察・検察の中で根強いため、自白後に覆すことは、極めて困難ですので注意が必要です。

1-5.防犯カメラの映像

最近、車両に防犯カメラが設置されている電車が登場しました。

女性の体を触っているか、触っていないかがはっきり分かるような防犯カメラの映像があれば、もちろん客観的に有力な証拠となります。

ただ「満員電車で乗客同士の体が密着して下方の状況が写らない可能性が高いのでは?」とその有効性を疑問視する声も一部であがっています。

また防犯カメラが設置されている車両は一部しかありません。

2. 相手の証言だけで容疑をかけられた場合

2-1.前提

刑事事件では、証拠がない場合には「合理的な疑いを超えた証明」がないということになり、「疑わしきは被告人の利益に」という考え方により、無罪判決がなされるべきです。

刑罰というのは、最大の人権侵害であるため、怪しいというだけで科してはならないものだからです。

2-2.現実

しかしながら、客観的な証拠がなくても、被害者の供述が「具体的・迫真的な供述で、不自然・不合理な点がない」と判断されると証拠になり有罪となってしまうのです。

被害者自身が、示談金目当てに痴漢事件をでっちあげるという案件もあるでしょうが、多くの痴漢冤罪事件は、被害者は、「触られたと思い込んだ」とか「別の人が触っていた(犯人を勘違いした)」ということだと思われます。

そうすると、被害者は、自分が嘘をついていないという自信がありますので、堂々と具体的・迫真的な供述ができることになります。

そうすると、裁判所も、このように堂々と証言しており、明らかに不合理・不自然な点が見つからなければ、被害者の供述は信用できると判断してしまうのです。

そして、被害者の供述が信用できると判断されると、これと食い違う被告人の供述は信用できないとされて、有罪判決となります。

2-3.「少し足がぶつかっただけ」「手の甲がぶつかっただけ」など言い訳は通用するか?

警察の取り調べなどで、自分の状況を具体的に説明する段階になった場合に、冷静に「こういうふうに立っていて、こうかばんを持っていたから、手の甲があたっていた」とか、「電車がゆれたときに足がぶつかった」などと、自分の言い分をきちんと説明する必要はあります。

ただ、このときにも、あくまでも、記憶にあることだけを具体的に伝えることが必要です。あいまいなことは言わないようにすることが肝心です。

また矛盾が出て来たり、DNA鑑定で被害者の体液の付着が確認されたり、目撃者や被害者の供述と整合しないということになれば、簡単に嘘はばれます。

裁判では、一つ嘘をつくと、その人が述べたことすべてが信用できないと判断されやすいので、情状も含めて、かなり不利になるので注意が必要です。

2-4.被害者供述の信用性に慎重な判断を示した最高裁判所の判決

最高裁判所は、平成21年4月14日に痴漢事件(強制わいせつ被告事件)で、無罪判決を出したことがあります。

これは、最高裁判所が初めて痴漢事件を無罪にした判決であると言われています。

この事案も、被害者の供述のみが証拠であった事案です。

第一審判決では、被害者の証言について、「当時の心情も交えた具体的、迫真的なもので、その内容自体に不自然・不合理な点はなく、被害者は、意識的に当時の状況を観察、把握していたというのであり、犯行内容や犯行確認状況について、勘違いや記憶の混乱が起こることも考えにくい」と、その信用性を認めて、被害者の供述を証拠として有罪判決を言い渡していました。

一方、最高裁判所は、一転して、被害者の供述の信用性を慎重に判断し、「疑わしきは被告人の利益に」の観点から無罪を言い渡しました。

この判決では、「被害者の供述の信用性の判断」について、次のように、重要なことが述べられています。

・満員電車内の痴漢事件においては、被害事実や犯人の特定について物的証拠等の客観的証拠が得られにくく、被害者の供述が唯一の証拠である場合も多いうえ、被害者の思い込みその他により被害申告がされて犯人と特定された場合、その者が有効な防御を行うことが容易ではないという特質が認められることから、これらの点を考慮した上で特に慎重な判断をすることが求められる。
・痴漢事件について冤罪が争われている場合に,被害者とされる女性の公判での供述内容について「詳細かつ具体的」,「迫真的」,「不自然・不合理な点がない」などという一般的・抽象的な理由により信用性を肯定して有罪の根拠とする例は,公表された痴漢事件関係判決例をみただけでも少なくなく,非公表のものを含めれば相当数に上ることが推測できる。しかし,被害者女性の供述がそのようなものであっても,他にその供述を補強する証拠がない場合について有罪の判断をすることは,「合理的な疑いを超えた証明」に関する基準の理論との関係で,慎重な検討が必要であると考える。(補足意見)
・一般的に,被害者とされる女性の供述内容が虚偽である,あるいは,勘違いや記憶違いによるものであるとしても,これが真実に反すると断定することは著しく困難なのであるから,「被害者」の供述内容が「詳細かつ具体的」,「迫真的」で「不自然・不合理な点がない」といった表面的な理由だけで,その信用性をたやすく肯定することには大きな危険が伴う(中略)『被害者』の供述するところはたやすくこれを信用し、被告人の供述するところは頭から疑ってかかるこというようなことがないよう厳に自戒する必要がある。(補足意見)

3.痴漢を解決したい場合は、弁護士に相談

上記の最高裁判所判決の影響もあり、痴漢事件の捜査は慎重に行われるようになってきています。

しかしながら、満員電車という密室で起こる痴漢事件が、客観的証拠が得られにくいものであるということに変わりはありません。

そこで、客観的な証拠がなくても、被害者供述が信用できると判断されれば、被害者の供述のみで有罪とされることがなくなるということはありません。

よく言われているように、両手でつり革につかまるなど、痴漢に間違われないような対策を取ることが、一番の自衛であるという状況に変わりがないことは覚えておく必要があります。

すでに逮捕されてしまい指紋も見つかってしまった場合など、痴漢問題や冤罪問題を解決したい場合は、すぐに弁護士に相談に相談することが大事です。

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