痴漢・盗撮にみる2018年の勾留請求却下の状況

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逮捕

勾留請求の却下率が急増している要因は?

痴漢や盗撮をして警察に逮捕された場合72時間拘束されますが、その後検察官によって10日間勾留請求を裁判所に出されます。それを裁判所側が却下することを「勾留請求の却下」といい、加害者は一旦は釈放されることになります。

ここ数年、検察庁の統計によると勾留請求の却下率が急増しているようです。これには、どうやら痴漢の冤罪事件の影響があるようです。これ以外にも、「理由なき拘束」がまかり通ってきた日本の裁判所の勾留判断につき、メスが入れられることになったのかもしれません。

今回は、勾留請求却下率急増の背景と痴漢・盗撮事件の関係についてご説明したいと思います。

安易な勾留に裁判所が警鐘!

まずは、勾留請求却下率がどれくらい上昇しているのか、そしてその原因や背景について見ていきましょう。

ここ数年、勾留請求却下率は上昇しつづけている

まずは東京地裁の勾留請求却下率についてみていきましょう。東京地裁の却下率については、全国の却下率よりも高く、平成17年には却下率1.5%で389件が却下されていました。これは日本の却下率の半分以上の数字です。そして、平成26年にはさらに却下率は上昇し、8%弱になっていましたが、この頃には全国に勾留請求を安易に認めない方針が広がっていき全体に占める割合は低下しています。

勾留請求却下の方針は全国の統計からもうかがい知ることができます。平成17年に0.47%だった却下率は、平成26年には2.71%まで上昇しています。過去5年間で5倍以上も増えているということが数字からわかると思います。勾留請求と同様に、保釈についても認める割合が増えているようです。

勾留請求却下率の推移

出典元:平成24年版 犯罪白書 http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/59/nfm/n_59_2_2_2_2_0.html

勾留請求却下の背景

では、なぜ10年ほど前から勾留請求却下の運用が増えているのでしょうか。

これは、これまでの捜査で安易な身体拘束が認められてきた運用を見直す動きが高まっているためです。特に、東京地裁では、「痴漢事件いついては勾留請求を原則認めない」という運用がとられ始めています。ここ数年で痴漢事件の無罪判決が増えていることとも関係しているようです。

裁判所としても、無用な身体拘束は避け、冤罪防止につなげようという機運が高まっているようですね。

裁判員制度が、公判中心主義を見直すきっかけに。

勾留請求は、被疑者につき身柄拘束を認める裁判所の決定であり、保釈については逆に被告人の第一審までの身体拘束を解く裁判所の決定のことです。

このどちらも裁判員制度の導入をきっかけに慎重に判断するような動きが高まっています。

以前の日本の司法に対しては、「否認すると拘束される」という批判が多くありました。これを変えるきっかけとなったのが裁判員制度の導入です。裁判員制度が導入されることで、捜査機関が作った供述調書よりも、裁判の中でも供述を重視すべきとする公判中心主義を見直すべきとする機運が高まったのです。

それまでは、裁判所内でも検察の判断を尊重する方針がとられていましたが、裁判所側でも、勾留が必要かどうかについて慎重に判断するようになりました。このように、勾留請求却下が急増している背景には、痴漢事件の冤罪防止意識や公判での供述を重視しようとする公判中心主義の見直しが影響しています。必要のない身体拘束は避けることで、無用な人権侵害を極力なくそうという動きが現在の日本の司法の流れのようです。

痴漢の場合|拘留請求却下について

では、具体的に、痴漢事件と勾留請求の関係性についてみていきましょう。

痴漢の勾留請求

まずは、どのようにして痴漢事件の勾留請求が行われるのか、その流れについてみていきます。

まず、痴漢事件として被疑者の身柄を拘束すると、逮捕から48時間以内に捜査官は検察に身柄を送検します。捜査の継続が必要と判断した場合には、24時間以内に裁判所に勾留請求をすることになります。この勾留請求に対し、裁判所は被疑者に対しいくつかの質問(勾留質問)を行い、勾留請求を認めるかどうかの判断を下します。

このように、勾留請求の可否は、最終的には裁判官が判断を行いますが、これまでは、検察官があげた拘留請求の内容を重視して判断が行われていました。この判断について変化が起こっているようです。

誓約書への署名で、勾留請求を却下する

痴漢事件について、最近では冤罪事件も多く取り上げられるようになり、国民の関心の高さも伺えます。近年、東京地裁では、原則として痴漢事件の勾留請求を認めない方針をとるようになりました。

具体的には、被疑者に「事件のあった電車の路線には乗車しない」ことを誓約書に署名させることにより、これを条件として勾留請求を却下するという方針です。

もちろん、すべての勾留請求を退けているわけではありません。ですが、よほどの重大な事実や常習犯である証拠がない限り誓約書を条件に身体拘束をしないように運用をしているようです。

痴漢での勾留請求を認めなくなってきている理由

そうだとしても、なぜ痴漢事件について勾留請求を「原則認めない」という方針をとっているのでしょうか。

まず、痴漢事件を起こしたという事実は、本人にとってとても不名誉なことであり、冤罪であったとしても社会的名誉の回復が困難といえます。本人だけでなく、家族や勤務先にも影響し、勾留期間が長くなれば、多くの人に知れ渡ることになります。ひどい場合には、職場を解雇されるというケースも少なくありません。

したがって、勾留事実の社会生活への影響を考慮したというのが1つの理由としてあげられます。

また、勾留理由の欠如もその理由です。痴漢事件で勾留される場合、勾留理由(刑事訴訟法60条)に当てはまることが必要となります。しかし、事件の多くでは、現行犯逮捕で、住所や勤務先もはっきりしており、逃亡や罪証隠滅のおそれもなく勾留するほどの明確な必要性がないということです。

このように、勾留した場合の社会生活への影響の大きさや、法律上勾留要件を充足するようなケースが少なく、勾留の必要性が乏しいということが重視されていることが背景にあるようです。

盗撮の場合|拘留請求却下について

では、類似の犯罪として盗撮事件でも同様に勾留請求を原則として却下する運用が始められているのでしょうか。

盗撮事件の却下率は明らかでない

盗撮事件は、痴漢事件と同じく、駅周辺で多発するわいせつ事案であり、類似点も多い犯罪です。また、冤罪の場合の被疑者の社会生活への影響も同じくらい深刻と言えます。では、盗撮事件の勾留請求の却下率は上がっているのでしょうか。

まず、盗撮事件単体では、勾留請求却下率の統計は出ていません。勾留請求却下率については、全体についてのみ統計が出ており、個別具体的犯罪については、知ることができないためです。したがって、盗撮事件の却下率が上昇しているかどうかについては、残念ですが、判断できません。

もっとも、痴漢事件と盗撮事件とは、勾留要件に違いがあることから、痴漢事件と同様の運用がとられるのかを推測することができます。

勾留請求に必要な要件3つとは

では、勾留請求の要件とは、一体どのような内容なのでしょうか。

勾留請求については、刑事訴訟法60条、206条等にて規定されています。そして、勾留要件については、

・「裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合」かつ「被告人が定まつた住居を有しないとき。」、
・「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」、
・「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき」、

の3つの要件のうちいずれかに該当する場合に認められます。

これを痴漢事件にあてはめてみてみましょう。先述したとおり、痴漢事案において被疑者は、日本国内に定まった住所があり、定職にも付いています。そして家族がいるケースがほとんどです。

この場合、「被告人が定まつた住居を有しないとき。」は該当しませんし、家族がいるケースでは「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由」があるとも言い難いと思います。また、痴漢事件は、現行犯逮捕が多く証拠は指に付着した繊維や周囲や被害者の供述などが証拠となるため、後で証拠を隠滅することは考えにくいのです。そのため、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」も充足しにくいといえるでしょう。

このように、勾留請求には、3つの要件があり、痴漢事件で勾留請求が却下されるのは、勾留請求要件を具体的に充足しない事案が多いということがわかると思います。

盗撮事件の勾留が認められやすい理由

では、盗撮事件では同様に勾留請求要件を充足しにくいといえるでしょうか。

盗撮事件では、痴漢事件のケースと同様に、家族や定まった住所、そして勤務先も明らかといった事案がほとんどでしょう。そのため、「被告人が定まつた住居を有しないとき。」や「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由」には該当しにくいと思います。しかし、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」の該当性については、痴漢事件と異なる事情があります

盗撮事件は、駅構内などで被害者のスカート中などを撮影するケースなどが代表例です。この場合、撮影に使ったスマホや写真などが証拠となります。その場で使っていたものについては、その場で確認し証拠として押さえることは可能です。しかし、盗撮は常習性が高い犯罪形態であり、自宅のPCなどにも盗撮動画や写真が残されている可能性が残ります。そのため、罪証隠滅のおそれを示す「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」に該当すると判断するケースが多くなるということです。

このように、痴漢事件において勾留請求却下の傾向が強まっているからといって、類似犯罪である盗撮事件においても同様とはいえないということがわかります。もちろん痴漢事件と同様に、勾留請求却下の可能性はありますが、近年の勾留請求却下の傾向として盗撮事件も同様の基準で語ることはできないでしょう。

今後、全体として勾留請求が認められることは少なくなるのか

では、今後の勾留請求による身体拘束はどのような傾向になっていくことが予測されるのでしょうか。

勾留請求却下急増の背景には、痴漢事件の冤罪を防ぐという趣旨が背景としてあります。裁判所の運用として「痴漢事件は原則として勾留請求を認めない」という対応がとられていることは、その証拠といえるでしょう。もっとも、裁判員制度が定着し公判中心主義についても再度見直されているという点から考えると、司法による身体拘束行為全体について運用上の変化がみられると思います。したがって、この傾向は他の犯罪、特に軽犯罪においては広がっていくのではないかと推測できます。

東京地裁の運用やその運用が全国に広がっていることから、痴漢事件の勾留請求却下率は、何か別の要因が働かない限り上昇し続ける可能性が高いといえるでしょう。しかし、盗撮事件については、罪証隠滅の可能性が高いため、勾留要件を満たす可能性が高くなります。そのため、却下率についてはは不透明です。

冤罪の場合の影響の大きさから勾留請求を安易に認めるべきでないという運用方針は今後もさらに大きくなっていくでしょう。

また実際に勾留請求を却下したい場合は、却下決定の取得経験が多い「痴漢に強い弁護士」にまず相談してみてください。

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