前科はつく?つかない?|逮捕・書類送検・略式起訴の場合
前科がつくと「就職できない」「解雇される」あるいは「前科がついたままの人生は送りたくない」などという理由から、前科が…[続きを読む]
痴漢事件を起こしてしまった場合、その後の人生や社会生活への影響が気になるでしょう。とくに、刑事事件を犯した場合につく「前科」の影響について不安になってしまうケースがよくあります。
ところで、皆さんは「前科と前歴の違い」をご存知でしょうか?
実はこの2つには大きな違いがあります。事件後の生活にも影響を及ぼす内容なので、本人だけでなくご家族も確認しておくべきかもしれません。
今回は、痴漢事件後の前科と前歴の違いを解説いたします。
まず、前歴と前科の違いについて理解していきましょう。
「前歴」とは捜査機関(警察官、検察官)の捜査対象になったことを言います。
なお、捜査対象となっただけで前歴はつきますので、起訴されたか・不起訴になったか、有罪判決となったか・無罪となったかは問いません。
前科は、起訴後、裁判で「有罪判決を受けた場合」につく犯罪歴です。
懲役や禁錮などの重い刑罰だけでなく、罰金・科料の判決を受けた場合にも前科がつきます。これは、裁判を簡略化した略式起訴となった場合でも同じです。
痴漢事件の場合は、迷惑防止条例違反か強制わいせつ罪で逮捕・起訴され、有罪判決が出た場合に前科がつきます(もちろん、執行猶予判決でも同様に前科がつきます)。
また、迷惑防止条例違反の場合には罰金刑がありますので、略式起訴されて罰金となった場合も前科がつきます。
「前科」と聞くと、殺人や放火など大きな犯罪を犯した場合に特別につく記録と思われがちですが、痴漢事件だけでなく、スピード違反などの交通違反でも有罪判決を受ければつくものです。
他方で、不起訴になった・起訴されたが無罪になった、という場合は「前科」はつきません。
このように、「前歴」と「前科」の意味は、大きく異なります。
「前歴」や「前科」がついてしまった場合、その後の生活への影響も気になります。
前歴・前科がある場合の生活への影響をみてきましょう。
一番考えられるのが、職場への影響です。
職場では、就業規則等で「前科がついた場合には処分を下す」旨の規定が定められているのが一般的です。
この場合に痴漢で罰金刑を受けるなどすると、懲戒処分を受ける可能性があります。
もっとも、前科や前歴は、警察などのデータベースにて保管されており、捜査機関が照会することは可能ですが、これを一般企業が探すことはありませんし、検索する手段もありません。
なので、自分から話さない限り、原則として知られることはないでしょう。
ただ、痴漢をして捜査機関に逮捕・勾留された場合には、移動の自由が制限されるので、職場に行くことができず、その際に痴漢の事実を知られる可能性があります。
就職活動をする際、履歴書に資格欄と共に「賞罰欄」が設けられている場合があります。
この場合には、前科等について記載する必要があります(賞罰欄がない場合には、前科を書く必要はありません)。
また、面接において前科を確認する企業が存在するようですが、この場合、嘘をついてはいけません。
嘘をついて就労する場合、発覚をしたら経歴詐称で懲戒解雇になる可能性もあります。
前歴・前科があると結婚できない、などという法律は存在しません。
とはいえ、結婚は信頼関係が大事です。痴漢事件は特に女性にとって受け入れ難いものですので、受け入れる側の努力も必要になります。
すなわち、法定上は問題なくても、結婚前に痴漢をしてしまい信頼関係が崩れてしまうケースがあります。
また、既婚の場合はそのまま離婚に発展してしまうケースも想定できるでしょう。
先述のように、自分から話さない限り、痴漢の前科や前歴が発覚することはありません。
もっとも、子どもの学校や近所の人にバレる可能性はゼロではありません。というのも、噂で知られる可能性があるためです。
また、マスコミによる実名報道やSNSによる拡散がある場合は、生活への影響が大きいかもしれません。
ネットニュースに逮捕歴が掲載されたり、それが拡散して2ちゃんねるをはじめとする各種掲示板、SNSに書き込まれると、「名前検索」すれば、すぐに逮捕歴は見つかってしまいます。また、これらを全て削除するには大変な労力を要することになります。
特に、社会的地位が高い人の痴漢は時たまにニュースになり報道されますので、仮に大々的に報道されてしまった場合は、引っ越しなどにより地域から離れて新しい生活を送る方が楽になるかもしれません。
なお、巷でいわれるような「パスポートや市区町村の庁舎で保管している住民票などに前科が記載」されるといったことはありません。
では、痴漢の「前科」や「前歴」は一生残ってしまうのでしょうか。消去できるのでしょうか。
過去に犯した「前科」や「前歴」などの犯罪歴は、警察、検察、本籍地の市町村で管理されています。
一定期間経過したから消去されるといった事はなく、警察と検察では死亡までデータが残ってしまいます。また、これについて削除や訂正もできません。
これらの情報は、今後の犯罪捜査や再犯防止のために保管しています。もっとも、一般の方による前科の有無について質問され、捜査機関がこれに回答したり、公開するといったことはないので安心してください。
このように、「前科」や「前歴」は消去することはできず、警察や検察では一生データベースに残ってしまいますが、これが理由で私生活に支障がでることはないので、過度に心配する必要はないでしょう。
前科がつくのを防ぐためには、無罪判決を獲得する、不起訴処分を獲得することが必要となります。
しかし、日本の刑事司法においては、無罪判決を獲得するのは至難の業です。したがって、痴漢をした場合に前科がつくのを防ぐためには、不起訴処分の獲得を目指すことになります。
不起訴処分になる理由は、
の3つになります。
痴漢行為に関わっている可能性がないと判断された場合「嫌疑なし」、痴漢行為を行った嫌疑はあるものの証拠が揃っていない場合は「嫌疑不十分」になります。
痴漢行為はあったものの、罪が軽かったり被告人が反省したりしている場合は、「起訴猶予」という不起訴処分になります。
痴漢の容疑が冤罪でない限り、被疑者としては起訴猶予を目指すことになります。
痴漢で逮捕されてしまった場合、前歴がついてしまうのはどうしようもありません。
しかし、「前科」がつかないようにする手段はあります。弁護士に相談をすれば、不起訴処分になるようするべきことをアドバイスをしてくれるでしょう。
なお、不起訴処分になるためには、被害者との示談が重要です。被害者と弁護士が交渉をすることで、示談が無事に成立する確率も上がります。
弁護士に刑事事件弁護を依頼することには大きなメリットがありますので、悩まれている場合はどうぞ相談をしてみてください。