盗撮の犯人が「黙秘」すると、証拠不十分で不起訴になる?
盗撮がバレると逮捕されます。
さらに罰金や懲役など(執行猶予になったケースを含む)の刑罰が適用されると、前科がつきます。
前科は、捜査機関が保管しており、一生消えることはありません。
しかし実際には盗撮をしても前科がつかない場合があるのです。たとえば黙秘していて、不起訴処分になった事例も実際にはあります。今回は、盗撮の被疑者が、証拠不十分で不起訴処分になるケースについて、解説致します。
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盗撮で逮捕されて、有罪になるまでの流れ
逮捕される
盗撮をしたとき、捕まるパターンは、以下のように犯行を目撃された場合です。
- ・被害者に見つかった
- ・周囲の人に目撃されて、取り押さえられた
- ・警察官に盗撮しているところを見られた
このような場合、現行犯逮捕されることも多いですが、ただ、いったん逮捕されても、初犯のケースでは、勾留されずに釈放されて、在宅捜査になることも多いです。
物的証拠を差し押さえられる
盗撮の場合、警察は被疑者の家の捜索をし、機器類を差し押さえて押収することがあります。
なぜなら被疑者は自宅のパソコン内などに、画像など物的証拠をためていることも多いからです。
その後、被疑者を勾留し、取り調べを行い、供述調書を集めます。在宅であっても、呼び出されて供述をとられることもあります。
起訴される
このようにして捜査を進め、起訴するだけの証拠が揃ったら、検察官は被疑者を起訴します。
盗撮した場合には、迷惑防止条例違反・軽犯罪法違反となることが多く、初犯の場合は起訴までされないことも多いですが、人の住居や管理施設内などに進入して盗撮行為をした場合に「住居侵入罪」または「建造物侵入罪」が成立し(刑法130条)、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられ、その場合起訴されることもあります。
初犯の場合で、起訴まで進んだ場合は罰金刑となることが多いです。
不起訴処分を獲得することが重要
盗撮をして捕まった場合、起訴されてしまったら有罪になって前科がついてしまう可能性が非常に高いです。
日本では、有罪率が99.9%以上だからです。そこで、被疑者がなるべく不利益を受けないようにするためには、不起訴処分にしてもらうことが重要です。
では、盗撮で捕まっても、不起訴になりやすいパターンとはどういうものが多いのでしょうか。
典型的なケースは「証拠不十分」な場合です。
日本の刑事裁判が高い有罪率となっているのは、検察官が「証拠がほとんど完璧に揃っている事件のみを起訴している」からです。
つまり、証拠が不十分で、起訴しても有罪にならなさそうな事件については、起訴しないということです。そこで、盗撮の証拠が足りなければ、検察官は起訴しません。
たとえば、以下のようなケースでは、盗撮でいったん捕まっても証拠不十分となって不起訴になる可能性があります。
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証拠不十分で不起訴になるケース
黙秘していて不起訴になるケース
被疑者が黙秘していると、不起訴になることがあります。もちろん黙秘していて不起訴になるのは、他の証拠がなかった場合です。
たとえば、通行人に盗撮を見つかったけれども、その場から逃げて、しばらく自宅で過ごしていたところ、防犯カメラなどで事件が発覚して任意同行されるケースがあります。
このような現行犯逮捕ではない場合は、盗撮の物的証拠である画像が発見されなければ、後から盗撮を証明するのは困難となります。
被疑者自身が「やりました」と認めていたら起訴することも可能ですが、否認していたり黙秘していたりすると、被疑者の供述は全く証拠にならないので、起訴することが難しくなります。
盗撮の被害者不明で不起訴になるケース
盗撮行為が行われても、被害者がそのことに気づかずに立ち去ってしまうことがあります。
また気づいても警察で証言する時間を惜しんで立ち去る被害者も多いです。
目撃者などが犯人を取り押さえても、被害者本人はすでにいなくなり、どこの誰だかわからないということもあります。
この場合、被害者からの証言をとることもできませんし、被害届も提出されません。そして、犯人自身も犯行を認めていなければ、盗撮があったという結果を証明することは困難です。
被害届が出なくて、不起訴になるケース
盗撮被害が起こっても、被害者が被害届を出さないことがあります。
被害者の立場からすると、嫌なことを忘れたいとか、面倒なことに関わりたくないと考えることもあるためです。この場合、検察官や警察官から被害者の説得が行われて被害届を出すように勧める可能性もありますが、被害者自身が頑として拒絶したら、被害届の提出を強要することはできません。
被害届が出ていなければ、基本的に被害結果を明らかにすることが難しくなります。
証拠の画像がなく、不起訴になるケース
盗撮行為が疑われると、捜査機関は被疑者の撮影機器を調査します。
しかし、すでに証拠を隠滅している場合、盗撮の結果が明らかになりません。
被害者がいかに盗撮を主張していても、嘘かもしれないということになってしまいます。そこで、証拠の画像が一切発見されない場合にも、証拠不十分となって不起訴になる可能性があります。
ただし最近は復元が容易なこともあり、証拠隠滅を図ってもバレてしまって悪質と判断されてしまうことも多いです。
冤罪で任意同行されたケース
盗撮で不起訴処分になるもう1つのケースが、冤罪のケースです。盗撮していないのに、いきなり「盗撮された」と言われて任意同行されることもありますし、通行人に取り押さえられてしまうのです。
このような場合、実際には盗撮していないわけですから、自宅内を調べても、何も出てきません。よく調べてみると、冤罪であることがわかります。
冤罪が明らかになると、当然起訴されることはありませんし、すぐに釈放してもらうことができます。
証拠を隠滅すると危険が大きい
被害者が誰だかわからないとか、被害届が出ないなどというのは、被害者側の事情なので、被疑者にはどうしようもないことですが、証拠画像の管理は被疑者自身が行っているので、削除することが可能です。
実際に、犯行後任意同行されるまでの間に証拠画像を消してしまい、起訴を免れる例もあるようです。
しかし、先述の通り、証拠隠滅をしてもデータ復元できるケースが多いです。データの削除がバレると、通常事案よりもかえって刑罰が重くなってしまう可能性が高いので、注意が必要です。
自分の犯罪事実に関する証拠なので、刑法上の証拠隠滅罪は成立しませんが、証拠の隠滅行為であることには間違いがなく、悪質な事案とみなされるからです。
盗撮で不起訴になりたいなら、示談が重要
以上のように、盗撮を行ったとき、不起訴になるケースにはいろいろなパターンがあります。ただそれだけでは確実に不起訴になるとは限りません。
盗撮で不起訴処分を受けたいときには、「被害者との示談」を弁護士に依頼することが一番確実です。
刑事弁護に長けた弁護士であれば、効果的に弁護活動を繰り広げることにより、不起訴処分を獲得してくれる可能性が高いです。
黙秘を続けていて本当に有効なのかについても、弁護士が判断してくれます。被害者が明らかになっていて証拠も揃っている事案では、黙秘をしても無駄なので、被害者と示談交渉を進めて示談を成立させ、検察官に申し入れをすることにより不起訴にしてもらう必要があります。
万が一、盗撮で捕まってしまった場合には、盗撮や盗聴、痴漢問題などにわいせつ事件に強い弁護士を探して、早めに相談しましょう。