性犯罪の厳罰化とは?刑法改正の内容と影響を解説!【2017年版】

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刑法

最近、国会で性犯罪の厳罰化を目的にした刑法改正が議題に上がっており、世間でも話題になっています。このことにより、今までの強姦罪の刑罰も重くなりますし、女性だけではなく男性も被害者になり得るなど、いろいろな取扱いが変わってきます。また、罪が成立する行為の範囲にも変更があります。

そこで今回は、今後成立する見込みの高い、性犯罪の厳罰化の内容と影響について、解説します。

1.厳罰化される性犯罪とは?

今、「性犯罪の厳罰化」が話題になっていますが、今回、改正の対象になっている「性犯罪」とは、具体的にどの罪のことなのか、ご存知でしょうか?
性犯罪には、いろいろな種類のものがあります。代表的なのは、以下のようなものとなります。

暴行や脅迫の手段を用いて男性が13歳以上の女性を姦淫したときか、12歳以下の子どもを姦淫した場合に成立するのが「強姦罪」(刑法177条)
暴行や脅迫を用いてわいせつな行為を強要したときに成立するのが「強制わいせつ罪」(刑法176条)
暴行や脅迫を用いなくても、相手にわいせつな行為をして迷惑をかけた場合には「迷惑防止条例違反」
未成年に対してわいせつな行為をした場合には「児童福祉法違反」など

この中で、今回改正の対象となっているのは、主に「強姦罪」です。

ただ、親告罪を非親告罪にするという点では、強制わいせつ罪も影響を受けます。

また、今回の強姦罪の改正により、今までは「強制わいせつ」や「児童福祉法違反」と位置づけられていた行為も、強姦罪と同様の処罰を受けることになります。その意味では、強姦罪だけではなく他の性犯罪全体に影響を及ぼすものと言えます。

このようなことから、今回の法改正は「性犯罪の厳罰化」と言われているのです。

なお、軽微な痴漢行為など(迷惑防止条例違反として処罰されているような行為)については、今回の改正対象になっていません。そこで、今後痴漢えん罪の被害に遭った場合などに、厳罰化によって厳しく処罰されることには、基本的になりません。

2.性犯罪の厳罰化の背景 110年

そもそも、どうして今のタイミングで性犯罪を厳罰化しようという動きが出てきているのでしょうか?

実は、現在の性犯罪(強姦罪)は、刑法が制定された当初の時期から、大きく内容が変わっていません。刑法が制定されたのは1907年(明治40年)ですから、今から数えると110年も昔です。当時は、まだ家父長制と言って、父親が家の長であるという制度がとられていた時代です。

そこで、強姦罪の目的は、家父長制を守ることでした。つまり、家人である女性が他の男から姦淫されると、他の男の子どもを妊娠する可能性があり、家父長の血統が乱れるおそれがあります。そこで、そのような血統を乱す行為を禁止して処罰しようというのが強姦罪の目的です。つまり、強姦罪は、「女性の権利を守るための罪」というよりも、「家父長制を守るための罪」という性格を強く持っているのです。

それでは、現在の強姦罪にはどのような問題があるのでしょうか?今の強姦罪の問題点を確認していきましょう。

3-1.刑が軽い

そもそも、「厳罰化」が叫ばれているくらいですから、刑が軽いことが問題です。

強姦罪は、「魂を殺す罪」と言われます。強姦された被害者は、自分の尊厳を踏みにじられた気持ちになりますし、一生その思いをぬぐえないまま生きていくことになる人も多いです。周囲の誰にも相談できずに泣き寝入りしていることもありますし、自殺してしまう人もいます。

このように、重大な罪であるにもかかわらず、強姦罪の罪は、懲役3年以上の罪(有期懲役)です。強姦によって相手をケガさせたり死亡させたりした場合の強姦致死傷罪であっても、懲役5年以上の罪または無期刑です。

これがどのくらい重いかは、殺人罪や強盗罪と比べてみるとわかります。

殺人罪の罪は、死刑または無期刑または5年以上の懲役です。

強盗罪の罪は5年以上の懲役刑、強盗致傷の罪は無期または6年以上の懲役、強盗が人を死なせた場合には死刑または無期刑となっています。

いかがでしょうか?強姦罪の刑が非常に軽いことがわかりますよね?

殺人罪や強盗致死罪には死刑がありますが、強姦致死罪にはありません。
刑の下限も、強姦罪や強姦致死傷罪は著しく短いです。

これは、刑法の制定当初、女性の権利などはさほど重視されていなかったことによるのでしょう。しかし、このような感覚は、現代の感覚にはそぐっていません。
強盗に殺された人と、強姦されて殺された人のどちらに苦痛が大きいのか?と聞かれたとき、必ずしも強盗の方が苦しい、ということにはならないでしょう。

3-2.男性は被害者にならない

また、今の強姦罪が適用されるのは、「女性が妊娠する可能性のある姦淫行為を強要されたとき」のみです。強姦罪は、男性には成立しません。男性は妊娠しないからです。
しかし、最近では男性が他の男性などから性交に類似した行為を強要されることもあり、男性も女性と同様の肉体的、精神的な苦痛を感じます。このことも現行刑法の問題点とされてきました。

3-3.性交に類似する行為は処罰されない

強姦罪は、女性器に男性器を挿入したときにしか成立しません。性交に類似する行為を強要しても、強姦罪にはならないのです。しかし、肛門に男性器を挿入されたり口に入れられたりした場合でも、やはり同じように苦痛を感じるものです。

3-4.子どもが親族から被害を受ける事例に対応できていない

最近は、子ども(主に女児)が親や兄などの親族から性交を強要される被害も起こり、問題になっています。しかし今の強姦罪は適用されにくいため、児童福祉法違反などしか成立せず、厳罰化すべきだという議論が起こっています。

3-5.親告罪であることの問題

強姦罪が親告罪である点も問題になっています。被害女性が相手を刑事告訴しないと相手は処罰されないのですが、強姦罪の被害を受けた女性が相手を刑事告訴すると、また問題が蒸し返されて2次被害を受けることになりますし、プライバシーを守りたいという意識もあり、なかなか告訴に至らないのが現状です。そこで、親告罪にしたままだと、適正に加害者を処罰できないという点も指摘されてきました。

このように、現行の強姦罪にはいろいろと現在の社会の常識や考え方と一致していない部分があります。そこで、今回の刑法改正により、上記のような現行の強姦罪の問題点を一気に解消しようとしているのです。

3.改正によってどう変わるのか?

それでは、今回の刑法改正によって、強姦罪はどのように変わるのでしょうか?
以下で順番に見ていきましょう。

3-1.罪名

まず、罪名が変わります。
今までは、暴行または脅迫を用いて姦淫した場合に「強姦罪」、その強姦行為によって相手をケガさせたり死亡させたりした場合に「強姦致死罪」「強姦致傷罪」でしたが、今回の改正後は「強姦罪」は「強制性交等罪」となり、「強姦致死傷罪」は「強制性交等致死傷罪」となります。
「強姦」というのは、男性が女性に対し、強制的に「姦淫」をしたという意味なので、今回はそれより処罰対象を広げるために、罪名も変えています。
そこで、今後「強制性交等罪」と言われたら、今までの強姦罪のことなのだと理解すべきということになります。

  • 強姦罪→強制性交等罪
  • 強姦致死傷罪→強制性交等致死傷罪

3-2.刑罰の重さ

次に、「厳罰化」と言われているくらいですから、強姦罪の刑罰が重くなります。

強制性交等罪になると、5年以上の有期懲役刑です。これは、現行の殺人罪と同じ下限です。殺人罪には死刑や無期刑があるので、強制性交等罪の方がかなり軽いのですが、それでも現行の3年以上の懲役よりは、かなり重くなっています。

強制性交によって相手をケガさせたり死亡させたりした場合には、6年以上の有期懲役刑となります。現行の強姦致死傷罪の法定刑は5年以上の有期懲役刑なので、今より1年分だけ重くなっています。ただ、強盗致死傷罪や殺人罪には無期刑や死刑があるのと比べると、これでもまだ軽いくらいという印象もあります。わざと人を殺したり、強盗しているときに人を死なせてしまったりしたら死刑や無期懲役になる可能性があるのに、性交等を強制しているときに人を死なせてしまった場合には、有期懲役にしかならないということだからです。

ただ、現行より法定刑が重くなったという点では、一定の評価はできるでしょう。

  • 強姦罪 3年以上の有期懲役→強制性交等罪 5年以上の有期懲役
  • 強姦致死傷罪 5年以上の有期懲役→強制性交等致死傷罪 6年以上の有期懲役

3-3.処罰対象の行為

今回、強制性交等罪の新設により、処罰対象の行為が拡大されています。
今までは、「暴行または脅迫を用いて、男性が女性を姦淫した場合」にのみ強姦罪が成立していました。

性交類似行為も処罰対象となる

まず、今回の改正では、男性器を女性器に挿入するという性交だけではなく、それに類似する行為も処罰対象となります。たとえば、男性器を肛門に挿入したり、口に入れたりする行為でも、強制性交等罪によって処罰されるようになります。

男性も被害者になる

次に、今までの被害者は女性に限られていましたが、強制性交等罪では、男性も被害者になり得ます。男性が他の男性に無理矢理肛門に男性器を入れられた場合などには、現行の強姦罪では処罰対象にならないのですが、強制性交等罪の場合には処罰対象となります。

3-4.親族間の場合の罪を創設

今回の刑法改正によって、新たに創設される罪があります。それは、「監護者性交等罪」と「監護者わいせつ罪」です。
これは一体何のことかと言うと、親などの監護者が、子どもなどの非監護者に性交やわいせつ行為をしたときに成立する罪です。

実際に、父親や兄などからレイプされる子どもがいますが、現行の強姦罪では処罰できていない現状があります。

まず、こうした事案では、親子関係や兄弟関係を利用しているため、被害者が抵抗しないことが多く、「暴行や脅迫」が手段として用いられないことが通例です。そこで、そもそも「強姦罪」や「強制わいせつ罪」自身が成立しません。

また、仮に強姦罪や強制わいせつ罪が成立したとしても、被害者と加害者が家族で、しかも加害者が監護者になっているのですから、被害者は加害者を刑事告訴しないことがほとんどです。たとえば、父親が娘を強姦したとき、それが家族に知れたら、「父親を守るために、告訴は辞めておこう」「家の恥を明らかにするのは嫌だ」、という話になってしまうでしょう。その場合、現行では、強姦罪が親告罪になっているために、処罰ができませんし、また犯行が繰り返されることもあります。

そこで、今回の改正により、まず、親などの監護者が子どもなどの非監護者に性交その他のわいせつ行為をしたときには、暴行や脅迫による手段が用いられていなくても、犯罪が成立することとなりました。

また、次にも説明しますが、今回の改正で強制性交等罪の全体を非親告罪とすることにより、子どもが刑事告訴をしなくても、加害者を処罰できるようになっています。

3-5,親告罪から、非親告罪へ

現行の刑法では、強姦罪も強制わいせつ罪も、親告罪です。親告罪とは、被害者が刑事告訴をしない限り、処罰ができないタイプの犯罪です。

そこで、現在は、強姦の被害者が警察に訴えて告訴状を提出しない限り、加害者は処罰を受けることがありません。ところが、強姦の被害者は、一日も早く辛い出来事を忘れたいと思っていることが多く、また強姦されたことを世間に知られたくないという思いも強いため、刑事告訴をせずに泣き寝入りすることが非常に多いのです。子どもが父親などからわいせつ行為をされたときに刑事告訴をしないという問題点も、先ほど指摘したとおりです。

そこで、今回の法改正によって、強制わいせつ罪や強制性交等罪は、非親告罪としました。これにより、被害者が告訴をしなくても、警察が捜査を進めて加害者が罰を受ける可能性が出てきます。

子どもが父親などからわいせつ行為をされたときには、子どもが刑事告訴しなくても、警察が父親を取り締まってくれるようになります。

3-6.集団強姦罪の廃止

今回の法改正により、廃止される罪があります。それは、集団強姦罪と、集団強姦致死傷罪です。これは、複数の加害者が手段で被害者を強姦したときに成立する犯罪です。

法定刑は強姦罪より重く、集団強姦罪の法定刑は下限が懲役4年(有期懲役)、集団強姦致死傷罪の法定刑は懲役6年以上の有期懲役となっています。

ただ、強制性交等罪の新設によって、集団強姦や集団強姦致死傷の場面は、強制性交等罪や強制性交等致死傷の罪に包含されることとなりました。また、集団強姦の罪は、強制性交等罪の法定刑と同じか(致死傷罪)、それより軽いです(集団強姦罪は懲役4年以上、強制性交等罪は懲役5年以上)。

そこで、集団強姦を強制性交等罪と別異に取り扱う必要がなくなり、今回の法改正のタイミングで、廃止することにしています。

4.性犯罪の厳罰化のポイント

  1. 強姦罪から強制性交等罪へ
  2. 法定刑が重くなる
  3. 性交類似行為も処罰対象になる
  4. 男性も被害者になる
  5. 親族間のわいせつ事件では、暴行脅迫が不要になる
  6. 非親告罪になる

今回の性犯罪の厳罰化のポイントは、主に上記の6点です。押さえておきましょう。

まとめ

今回は、今後成立する可能性が高い、性犯罪の厳罰化について解説しました。

強姦罪は、明治時代からほとんど変わっていない犯罪類型です。現代社会の感覚には一致していないので、改正の必要性は高く、野党も大きく反対している状況ではないため、おそらく改正案が通るでしょう。

今後は、男性も強制性交の被害者になりますし、姦淫をしなくても、性交類似行為をしただけで処罰対象になります。親などが子どもにわいせつ行為をすると、暴行や脅迫をしていなくても重い罪が成立します。

今回の改正案により、性犯罪の被害者の救済が一歩進むこととなりますが、まだまだ不十分という意見もあります。最近では、LGBTなども社会で認知されてきており、性に関する自由や権利が重要視されているので、今後も性犯罪の法改正についての動向には注視していくと良いでしょう。

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