盗撮は再犯だと罪が重くなるの?初犯と再犯で罪や罰則の違い
盗撮はやってはいけない犯罪です。ですが法律上は、軽い罰金程度で済むこともあるのが実情です。もっとも、「軽い罪や罰則し…[続きを読む]
盗撮行為といえば、御存知の通り「許可をとらず、他人をこっそりと盗み撮る」というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。しかし一方で、週刊誌の盗み撮りの行為は、犯罪じゃないの?という素朴な疑問もでてきます。
また近年、手軽に盗撮ができるようになり、心理的なハードルが下っていることも事実です。
なおiphone等を代表とするスマートフォンやタブレットなどの発達、無音カメラや、一見してカメラとはわからない形をしたペン型、腕時計型の小型カメラ、スパイカメラなどの発達が盗撮犯罪に拍車をかけています。
今回は、盗撮はどのような法律(刑法)、条例、基準で、どのような罰則が適用されてしまうのかを詳しく見ていきながら、不明瞭で曖昧な「盗撮」の定義を解説いたします。
盗撮行為は、基本的には国で定める法律(刑法)ではなく、地方公共団体の議決で成立する「条例」で罪と定められており、「盗撮罪」という名前の犯罪はありません。
下表は東京都の場合で、都道府県によって内容は少しずつ異なりますが、以下の金額を目安・相場と考えても特に問題はないでしょう。「迷惑防止条例違反」と「軽犯罪法違反」の2つに大きく分けることができます。
罪 | 刑罰 |
---|---|
迷惑防止条例違反(東京都) ※撮影した場合 | 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金 |
迷惑防止条例違反(東京都) ※カメラを向けた/設置した場合 | 6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金 |
軽犯罪法違反 | 拘留:1日以上30日未満の範囲で刑事施設に拘置 科料:1,000円以上1万円未満の金額を納める |
表からも分かるように、撮影が実際に行われなくても罪にならないわけではなく、撮影する目的で「カメラを向ける」もしくは「カメラを設置する」だけで迷惑防止条例違反とする自治体が増えてきています。従来の認識や定義での「盗撮」が通用しなくなってきています。
また迷惑防止条例違反よりも、軽犯罪法違反のほうが罪が軽いことが普通です。
なお再犯の場合は刑罰が上記より重くなる傾向があります。
盗撮といえば、女性の下着や身体を撮影することだと思いがちです。
しかし平成18年、北海道旭川市で女性の臀部ばかりを撮影した男性が逮捕されました。この男性は衣服に覆われた状態の女性の臀部を撮影していたため、それが迷惑防止条例違反に当たるか裁判で争点となりました。
そして平成19年9月、札幌高等裁判所においてこの男性の行動は「人を著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような卑猥な言動」とされたのです。
つまり「人の通常衣服で隠されている下着」を撮影したかどうかが問題ではなく、「人を著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせる」行為であれば衣服の上からの撮影でもこの条例違反となることがあるというわけです。
もちろん「衣服の上から撮影=盗撮=即逮捕」となるわけではなく、その前後の行動や撮影された写真の構図などから総合的に判断されます。
また「盗撮」とは画像データを残すことというの一般的な認識があるかと思います。
しかし東京都を含む20前後の都府県では、画像データを残さなくても、「撮影しようとしてカメラを向ける・設置する」行為であっても適用される場合があります。
たとえば最近ではポケモンGOなどのゲームアプリ中の姿が「盗撮犯と間違われてしまうのではないか」とその危険性も指摘する声があります。
もしもポケモンGOをしている姿が盗撮をしているような姿に見えて、しかも偶然近くに警察官が通りかかる場合も十分に考えられると思います。
その場合、不審者扱いをされ職務質問をされる場合があります。普通に対応すれば無実の罪で逮捕されることはありませんが、過剰に警察官に反発した場合は騒動になる可能性はあります。
盗撮をした場所によっては、先ほど紹介した「迷惑防止条例違反」が適用されません。
なぜなら迷惑防止条例の条項をみると「公共の場所における盗撮の取り締まり」を目的としていることが分かるからです。
つまり、勤務先の会社の更衣室での撮影の場合、「公共の場所」ではないので迷惑防止条例違反ではなく軽犯罪法違反という罪が適用されます。
逆に、
などは「公共の場所」ですから、このような場所での盗撮には迷惑防止条例が適用されることになります。
「本屋や駅のエスカレーターで女性のスカートの中を撮影する」などはその典型です。
盗撮行為そのものではない罪で逮捕される場合があります。例えば盗撮のために他人の家や会社に無断で入り込むと、
などで起訴され裁判で刑法によって罪に問われる可能性があります。
また、盗撮した対象が18歳未満であった場合「児童ポルノ法違反」に該当する場合があり、こちらも刑法違反で起訴され裁判になる可能性があります。
盗撮した人物に固執している理由が別にある場合「ストーカー規制法」(ストーカー行為等の規制等に関する法律)等で懲役刑の可能性もあります。
犯罪のつもりもなく盗撮で逮捕された場合、家族はともかく職場や学校などに知れわたってしまった場合、その後の生活に多大な影響を及ぼします。
可能な限り早く留置場からの解放を目指し、実生活への影響を最低限にする必要があります。また不起訴処分にして前科がつかないようにする必要があります。
これらの活動は被疑者の家族だけで行うことはかなり難易度が高いです。
被疑者が置かれた状況を正しく理解し、まとめ、適切な方法で警察や検察、被害者とやりとりをする専門家、弁護士への依頼を強くおすすめします。
刑事事件は時間との勝負です。弁護士は法律や条例違反で逮捕された方を限られた時間で適切に対応するプロフェッショナルですので、「逮捕されたらまず弁護士へ相談」というポイントも頭の片隅に入れておいてください。