痴漢で被害者と示談する流れ。示談金・慰謝料の相場は?
痴漢は、強盗や殺人などの凶悪犯罪と比較すると「軽い罪だから簡単に解決できるはずだ!賠償金も安いはず!」とイメージされ…[続きを読む]
刑事事件(痴漢や盗撮、傷害など)の被疑者・被告人になってしまったときには、被害者との示談が非常に重要です。
示談が成立すると、例え勾留されていても早期に身柄が釈放される可能性が高くなりますし、不起訴となり前科を回避できたり、有罪となっても執行猶予がつく可能性が高くなったりします。
さて、示談が成立した際には「示談書」を作成することが大切です。しかし、「どのような書式で、何を書けば良いのかわからない」という方も多いでしょう。
今回は、刑事事件の示談書について、作成することによる法的効力やその書き方や、自分で作成する際の書式・テンプレート(雛形)をご説明します。
痴漢や盗撮、万引き、暴行・傷害などの刑事事件を起こしてしまったら、被害者と「示談」することが重要です。
示談とは、加害者と被害者が裁判外で話し合いをして、損害賠償金額や支払い方法を決めて和解をすることです。個人間で行うことも可能です。
刑事事件を起こした場合、加害者は違法行為によって被害者に損害を発生させることになりますから、被害者に対して損害賠償義務を負います。
示談ができたということは、その賠償義務を果たしたということですから、法的な義務を完了したこととなり、それ以上被害者から裁判をされて損害賠償請求されることがなくなります。
それでは、刑事事件を起こしたときに示談をすると、民事的な賠償責任を果たす以外にどのような効果があるのでしょうか?
示談が成立すると、加害者の刑事手続きにも非常に大きなメリットがあります。
被害者と示談ができているということは、被害もある程度回復されていることになります。また、被害者としても、加害者に対する感情がある程度和らいでいることが通常でしょう。
そのため、示談ができていると、加害者にとって良い情状と評価されて、検察官が起訴処分をする可能性が低くなります。
起訴された後に示談ができると、言い渡される刑罰が軽くなる可能性も高くなります。
たとえば、懲役刑(実刑)が見込まれる場合でも執行猶予がつく可能性が高くなりますし、懲役刑(執行猶予)が相当な事案でも罰金刑にしてもらえる可能性なども出てきます。
そこで、被疑者・被告人にとっては、被害者と示談を成立させることが非常に重要となるのです。
示談書とは、被害者と加害者が話し合って示談をした内容をまとめた書面です。
では、わざわざどうして示談書を作成するのでしょうか?「話し合いができたのであれば、単純に被害者にお金を渡して領収証をもらえば良いのではないか?」と考える方もいるかもしれません。
確かに、示談は口頭で行った場合でも法的効力があります。当事者がお互いに示談金の金額に納得して、加害者が被害者に支払いをしたら、その時点で民事賠償は完了するはずです。
しかし、加害者としては示談金を支払ったと思っていても、被害者から「まだ損害全額についての支払いを受けていない。あれは一部に過ぎないから追加支払をしてほしい」「あれは、単なるお見舞い金で、示談はまだできていない。これからきちんと損害賠償の話を進めていきたい」などと言われる可能性があります。
そのようなことになったら、第三者から見ると示談は成立していないという評価になります。
単に「一部被害弁償ができている」というだけの評価となりますから、検察官が良い情状として評価してくれることはなく、不起訴を獲得することは難しくなります。
これは裁判になったときも同じで、やはり「示談が成立していない」という評価になると、刑罰を軽くしてもらうことができません。
そこで、示談書を作ることによって「示談が成立していることを証明する」ことが重要です。
示談書を作成せずにお金を払うとトラブルの元となりますから、必ず被害者が示談書に署名押印をして、示談書ができあがった後に金銭の支払いを行いましょう。
基本的には、以下の書式・テンプレートを参考に、事案に応じて自分でアレンジして作成してみても良いでしょう。
以下で、各項目と書き方のポイントを具体的に確認してまいりましょう。
以下3点についてまず端的に記載しましょう。
支払い方法については、直接手渡しするのか、振込送金するのか、小切手を振り出すのかなどを明記しましょう。
その場で現金を手渡しした場合には、「本日〇〇円受領した」と記載して、被害者に領収証を発行してもらう必要があります。
また、期限についても定めておくべきです。「〇年〇月〇日までに支払う」と記載して、期限までに確実に支払いを終えましょう。
たとえば、痴漢や盗撮、ストーカー、強制わいせつなどの性犯罪の場合、加害者が被害者に一切接触をしない、という約束をすることが多いです。その場合には、そのことも条項化して、盛り込んで書いておく必要があります。
被疑者被告人の情状を良くするには、被害者が被疑者を宥恕(許す)ことが非常に重要です。そこで、相手方がこれに同意してくれるようなら、必ず盛り込んでおきましょう。
できれば、被害者が被疑者に対する寛大な処分を希望することまで入れておくことが望ましいです。
示談成立によって、すべての民事賠償が完了したことを明らかにすることが重要です。これにより、後に被害者から「まだすべての賠償が済んでいない」と言われて追加請求をされるおそれなどがなくなるからです。
示談書には、必ず当事者(被疑者・被告人と被害者)それぞれの手書きの署名が必要です。示談書の条項などはパソコンで作成してもかまいませんが、サインは手書きにしましょう。
示談書を成立させるためには、押印も必要です。押印がないと、示談書が無効になってしまうおそれもあるので、必ず押印してもらうようにしましょう。
ただ、示談をしたその場で被害者が印鑑をもっていない場合などには、とりあえず署名だけしてもらって、後で印鑑をもらってもかまいません。
示談書を書く時は、パソコンで作成しても手書きでもかまいません。
ただ、本文や日付はパソコンでもかまいませんが、当事者の署名押印欄だけは手書きにしましょう。
示談書が無効になるケースとして、署名・押印時に注意することがあります。
まず、被害者を脅して無理矢理示談書に署名押印させると、示談書は無効となります。強迫による意思表示は、取り消すことができるので、被害者が取消権を行使すると、示談はなかったことになるからです(民法96条1項)。
また、被害者を騙して錯誤に陥れて署名押印させた場合にも、やはり示談書は無効となります。詐欺による意思表示は取消対象となりますし、錯誤にもとづく意思表示はそもそも無効だからです(民法95条)。
さらに、押印方法にも注意が必要です。
先程、示談書を作成するときに押印が必要と言いましたが、このとき、シャチハタを使うことは望ましくありません。シャチハタは大量生産の印鑑で、ゴム製で印影が変わる可能性があり、信用性が低いからです。
認印でかまわないので、必ずきちんとした印鑑を使いましょう。
実印である必要はありませんが、実印でももちろん有効です。
今回は痴漢や盗撮、窃盗など刑事事件における示談書の書き方や、書式・テンプレート(雛形)を解説致しました。
被害者が存在する刑事事件においては、被害者との示談交渉が非常に重要です。逮捕されてしまって早く釈放されたいとき、不起訴となって前科を免れたいとき、起訴されてしまったけれども実刑は免れたい場合など、どのようなケースでも示談が有効です。
ただ、被害者と示談をするときには、刑事処分が終わるまでに成立させなければならないので、急ぐ必要があります。
弁護士に依頼すると、不備なく有効な示談書を作成することができます。期限までにきっちりと示談書を作成して確実に軽い刑事処分を獲得するため、是非ともお早めに弁護士までご相談ください。