痴漢冤罪事件後の本当に恐ろしい人生

監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事は痴漢・盗撮弁護士相談カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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その後の人生

痴漢騒動がまねきよせる恐ろしい被害

痴漢事件は「加害者が100%悪い」「社会的制裁を受けるべき」などという単純な二元論で片づけることができない深刻な問題です。

過去に起きた痴漢事件を紹介しますので、日ごろどのような心構えで過ごすべきかを考えるヒントにしていただければと思います。

JR西日本の重役、公園の便所で自殺

「痴漢です!」女性にそう叫ばれたが最後、被疑者A氏は地位も名誉も財産もすべて失いました。命さえも…。

女子高生から痴漢の取り押さえを求められた会社員と、加勢した男子大学生駅員によって取り押さえられたA氏は駅事務所に連行されました。駅員はA氏が自分の会社の重役とも知らずに警察へ通報し、間もなくA氏は迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕されパトカーで天王寺署に移送されました。

確認されている事実はたったこれだけなのです。ところが…

翌日、テレビ各局はA氏の顔と実名をさらしてA氏の痴漢容疑を大々的に報道しました。翌日の朝刊各紙も、実名でA氏の逮捕を報じました。「JR西役員JRで痴漢」と堂々と見出しを掲載するスポーツ新聞もありました。

A氏は「背中かお尻に右腕が当たったかもしれないが、痴漢はしていない」と否認を貫いたまま、公園のトイレで自らの命を絶ちました。

「女性に叫ばれたらとにかくその場から逃げろ!」と多くの弁護士が口をそろえてアドバイスするのもあながち間違いではないと思います。痴漢の疑いをかけられたら、事実かどうかにかかわらず、まず間違いなく逃げることができず、逮捕されてしまうでしょうから。

自殺の知らせを聞いて被害者の女子高生は号泣したそうです。

自殺を選んだA氏。自分の証言によって人を自殺させてしまったと、一生自責の念に苛まれるであろう女子高生。どちらも不幸な運命を背負ってしまったのです。それでもマスコミや報道機関は機械的に情報を垂れ流し、今日もまたどこかで多くの人が社会的生命を絶たれ、悲しみが悲しみを生み続けているのです。

痴漢が卑劣な行為であることは言うまでもありませんが、痴漢で逮捕された男性が、恥辱に耐えかねて「死」を選んだとすれば、死んで当然と言えるのでしょうか?

大阪御堂筋の痴漢でっちあげ事件→冤罪を立証

大阪の地下鉄御堂筋線で起きた痴漢でっちあげ事件です。犯人は示談金目的の男女2人組み

ニュースでも大きく取り上げられた事件ですので記憶に残っている人もいるかと思います。被害者の男性は、自分が痴漢と疑われていると感じた瞬間に「はめられた!」と思って、被害を訴えようと駅事務所へ駆け込んだのですが、逆に迷惑防止条例違反で現行犯逮捕されてしまいました。

しかも、被害者男性はインタビューで、「警察は私の主張に一切耳を貸さず、痴漢をしたと決めつけて勾留した」と語っています。

最終的に被害者男性の無実が証明され、逆に痴漢でっちあげ犯人の男女2人組が虚偽告訴罪として逮捕されました。

加害男性には5年6ヶ月の実刑判決、
加害女性には懲役3年執行猶予5年の執行猶予付きの判決が下されました。

幸いにもこの事件の被害者は、冤罪が立証され、家族を含む周囲の信頼があったとのことですが、必ずしもこのような状況になるとは限りません。

痴漢が事実かどうかに関わらず、痴漢の容疑をかけられたという「事実」がきっかけで、家族がバラバラになる可能性すら考えられるのです。職場からただちに解雇はされなくとも、自主退職に追い込まれ、家族に去られ、親戚一同の信頼も失い、地域住民からも白い目で見られ、転居を余儀なくされるケースもあるのです。

常磐線の女子高生・痴漢冤罪事件

冤罪として最終的に男性が無実となった事件です。痴漢をしたとされる男性と、男性を痴漢として自分で捕まえた女子高生との間で争われた問題なのですが、最終的には男性は無罪となりました。

裁判で男性の冤罪が確定した理由は、被害を訴えた女子高生の証言に一貫性が無く、証拠不十分だと判断されたためです。また、この女子高生は、過去に5回の痴漢逮捕歴があり、示談金を取っていた、という事実も判断材料だったと記録されています。

この事件では男性の冤罪が立証されましたが、「無罪でよかったね」で済ませてよい問題でしょうか。男性は、迷惑防止条例の現行犯として逮捕された後に、警察に22日間も勾留されたのです。

もしこの男性の立場なら、22日も出勤できないことを会社にどう説明したらよいのでしょう。調査の一環で会社に連絡が入ったらどうなるのでしょう。保釈後、平常心で出勤できるのでしょうか。同僚や女子社員の視線をどう受け止めて過ごしたらよいのでしょう。あなたが社会的地位の高い人で、逮捕から無罪確定までの一部始終がメディアで全国報道されたあとの風評被害にどう対策したらよいのか。

最終的に冤罪が立証されたとしても多大なリスクと損害を負うのです。

■参照リンク
三鷹バス痴漢冤罪事件とはどんな事件??

【新宿署違法捜査憤死事件】痴漢冤罪で自殺と遺族の訴え

示談して不起訴になったケースや嫌疑不十分、誤認逮捕の場合であってもネット上にニュースが一度流れてしまうと、なかなか削除されません。2chや各種SNS、ブログに情報は拡散されて増殖されてしまい、その後の就職活動、結婚、住居の賃貸時などに多大な影響を与えます。

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